今回読んだのは、図書館の電子ブックはたいがい借り出し状態、紙の本は図書館に予約してもかなり待たないと借りられない、そんな人気のある本。

運がよかったのでしょう。図書館の電子ブックを借りることができました。

Juurihoito

Juurihoito
著者:Miika Nousiainen
出版:Otava  2016年

画像元:Juurihoito | Otava

Pekka がまだ小さかった頃、ある日買い物に出た父親はそれっきり戻ってはきませんでした。

月日は流れ、Pekka は2児の父親。ただし離婚したために、子供たちと一緒に過ごすのは、2週間に一度の週末だけ。

ある日歯科医院へ行った Pekka、そこの歯科医の苗字が自分と同じことに気付きます。その苗字はちまたにはあまりないもので、その苗字を持つということはおそらく親類…

その歯科医 Esko は、実は異母兄弟でした。Esko もやはり幼いころに父親に捨てられたらしい。

そして Pekka と Esko は、父親を探す旅に出るのです。

*****

適度のユーモアと、意外な展開…

大人向けのフィンランド小説は、なんとなくインテリな世界感が漂っている気がしていたのだけれど、そんなことはないのですね。楽しく読める作品でした。

小説だからこんな展開ができるんだろうねえ、と思いつつも、その展開も楽しめたし、読後感もよかったです。

お勧めしたいところだけれど、フィンランド語というマイナー言語で書かれているのが玉に瑕。

"Juurihoito"の意味

juuri 起源根源 hoito 治療 の複合語。
juurihoito で、歯根治療 を意味します。表紙の絵も、歯の治療を連想させません?

でも、どうやらこの書名は、歯根治療という狭い意味だけでつけられているのではないようです。

兄弟が父親を探すことは、自分たちの根源(父親がどんな人だったのか)を知ること。それは同時に、自分を見つめ直すことでもあります。そしてそのことで、兄弟それぞれの心の奥底にある傷が癒されていく。…そのことも Juurihoito という書名に含ませているのでしょう。

内表紙(表題紙)には、副題 "Suku- ja hammaslääkäriromaani" も書かれています。

suku 親族とか家族のこと。そのあとに "-" がついているのは、そのあとの言葉にある後半の部分と複合語になるということ。(つまり、sukuromaani )

ja は接続詞

hammas lääkäri 医者のことなので hammasläääkäri 歯医者歯科医
romaani 小説

"家族・歯科医小説" っていうことになりましょうか?

著者について

Miika Nousiainen(1973年~)は、フィンランドの作家・レポーター。ドラマの脚本なども書いているそうです。

この『 Juurihoito』は彼の4作目の小説。演劇化もされています。近々映画化もされるとか。

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