図書館をうろうろしていた時に、何気なく手に取った本です。新しい本(2016年出版)だったこと、そしてテキストよりも写真のほうが多かった、というのがうちに連れ帰る(借りてくる)決め手となりました。本屋さんから連れ帰る(買ってくる)のとは違って、図書館から連れ帰るのは気軽です。

Turku ennen ja nyt

この本の表紙は合成写真。

Turku ennen ja nyt
著者:Rauno Lahtinen, Merja Otronen
出版:Turkuseura/Åbosamfundet  2016年
装丁:Merja Otronen
表紙写真:P.O. Jansson  1955年・Merja Otronen 2015年
向かって左側は1955年に撮影された通りの様子。右側も同じ通りだけれど、撮影されたのは2015年…60年間の差があります。

とはいうものの、この写真を見ただけでは、地元の人じゃないと現在との違いは分からないかもしれませんね。少なくとも私はピンときませんでした。それでもなんとなく歴史を感じさせる面白い合成写真だと思いませんか?

ところで1955年って、どれぐらい自家用車が普及していたんでしょうか? この写真に写っている車の多さに驚いたのは私だけ?


さて、書名にある Turku…フィンランドの古都トゥルク市。首都ヘルシンキ市よりもずっと前からあった街です。

古い建物も残ってはいますが、道を広げる、あるいは新しい建物をつくるために1960~70年頃に壊された建物も数々あります。


もっとも、トゥルクに限らずフィンランドの他の街でも、そしてフィンランドに限らず、例えば日本の街でも、この数十年の間に街の様相は大きく変わっていますよね。

昔の通りの写真を見ただけでは、それがどこの写真なのか分からないことだって、そう珍しいことではないと思うのですよ。


この本では、昔の写真とその場所の今の写真を並べて紹介しています。昔の写真のアングルと同じアングルで今の写真が撮られているので、どれだけその街並みが変わっているか、あるいは変わっていないか、というのが一見できます。

古い写真は、20世紀の初め~中ごろのもの。古い写真の時代がまちまちなのは、現存している街並みの写真がそう大量にあるわけではないからなのでしょう。

デジタルで気軽に写真が撮れる今とは違って、写真を撮って現像するって、時代をさかのぼるほどに高価だったはず。だから、写真の数自体が少ない。それに、普段見慣れた街並みをわざわざ写真に残すなんてことはあまりしなかったのでしょうね。考えてみれば、私たちだって、家の近くの通りをただ写す、なんてことはあまりしない気がしません?

そう考えれば、貴重な写真が集められた本とも言えます。場所によっては、今の街並みからは全く想像できない様相…歴史が垣間見られて面白いです。


自分が生まれ育った地域・国であれば、昔のことをある程度は知っていますよね。親から聞いた話とか、おばあちゃん・おじいちゃんから聞いた話とか。あとは、学校でも何らかのことは学ぶでしょう。

でも、大人になってから移り住んだ地域や国の昔のことは、知ろうとしないと知ることができない。…別に知らなくとも困らないけれど、フィンランドに住んでいる(おそらく永住する)のになんだかその土台が全くない気がする。いつまでたってもよそ者だと感じてしまうところもあります。

そういうことを考えると、こんな本を眺めてみるのも時にはいいかな、と思うのです。トゥルク市は自分の住んでいる街ではないこともあって、親近感はいまいちなのですが。

"Turku ennen ja nyt"の意味

Turku は地名なので、それ以外の単語の意味を。

  • ennen 以前
  • ja ~と
  • nyt

ということで、書名を日本語にすると『トゥルク 昔と今』というところでしょうか。

著者について

著者の Rauno Lahtinen は、トゥルク市在住の文化史家。トゥルクの歴史に関する書籍を他にも多く書いている方です。

Merja Otronen は写真家です。


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