少し前に読んだ小説『Juurihoito』(関連記事 【小説】Juurihoito:父親を探す旅)がなかなか面白かったので、同じ作者(Miika Nousiainen)の処女作を読んでみました。

Vadelmavenepakolainen

フィンランド人である Mikko Virtanen(ミッコ・ヴィルタネン *ミッコは男性名、ヴィルタネンはフィンランドで2番目に多い苗字)は、自分は間違った国に生まれ、間違った国籍を持ってしまったのだ、と考えています。彼は、自分がスウェーデン人であるべきだと思っている。スウェーデン人になることにあこがれ、スウェーデン人になろうと努力する日々を送っています。

スウェーデンをとにかく崇拝しきっていて、自宅にはスウェーデンを祀った祭壇?!も。そして、完璧なスウェーデン人になるための彼の行動は、どんどんエスカレートしていきます。

Vadelmavenepakolainen
著者:Miika Nousiainen
出版:Otava 2011年(初版 2007年)

画像元:Vadelmavenepakolainen | Otava

主人公の祭壇に祀られている人々?の一部がこの表紙にも登場しています。小さい写真だけれど分かります? 国王夫妻、オルフ・パルメ、ビョルン・ボルグ、長くつ下のピッピ、ABBA。うん、確かにみんな、スウェーデンを代表する人たち…

コメディなのだとは分かっていても、主人公の行動がエスカレートしていくのには、ちょっとついていけませんでした。だからいまいち楽しめなかった。コメディって難しい…

この作品は映画にもなって、今年の初めにテレビでも放映されたようです。私は見ていません。何しろその頃、この作品の存在すら知らなかった…

*****

さて、この本はおそらく、フィンランドとスウェーデンの事情をある程度知らないと面白くない。そして、下にリンクしたのは、その事情を理解するのに役に立つであろうページ。フィンランド国営放送Yleのオンデマンドサービスですが、ログインも必要ないし、この番組はフィンランド国外からでも視聴可能なはずです(スマホからはYleのアプリがないと視聴できないかも)。…とはいっても、フィンランド語の番組なので、見る人はかなり限定されると思いますが。

Jakso 10: Ruotsi-trauma ja tulevaisuus | Suomi on ruotsalainen

これは、"Suomi on ruotsalainen" という10回シリーズの番組の最終回。ちなみに、この本の作者も登場しています。


フィンランド人のスウェーデンに対する感情というのは、なんとも独特。スポーツでスウェーデンが負けると大喜びだし、スウェーデン人をコケにしたジョークはわんさかある。とはいっても、心底スウェーデンを嫌っているわけではない…

なかなかないと思います、こういう関係の国って。ある意味微笑ましい。

"Vadelmavenepakolainen"の意味

著者の造語と思われます。3つの単語の複合語です。
  • vadelma ヨーロッパキイチゴラズベリーの一種)
  • vene ボート小舟
  • pakolainen 難民
とはいうものの、これらの単語(複合語)はあります。
  • Vadelmavene (商品名?)スウェーデンで1928年から作られてきたというグミ菓子。ラズベリー色でボート形だからこの名前?
  • venepakolainen ボートピープル(難民)
Vadelmavene が、主人公の憧れであるスウェーデンを、venepakolainen が主人公の心理を象徴しているのでしょうか?


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