いつものように、図書館の電子ブックを「今一番借りられている」順に並べたときに、上位にあったので借りました。

こういう借り方だと、自分からは絶対選ばないであろう本も手に取ることになる、というのが利点だと思っています。これなら、食わず嫌いにはならずにすみそうだし。

Ruokarouvan tytär -Syrjästäkatsojan tarinoita Ⅴ-

この表紙も、フィンランドの本によくあるパターン。著者名が書名よりでかい!! そして、これがシリーズものだということは、知っている人には明確なのだろうけれど、知らない人には、この表紙を見ただけでは分からない…

はい、私もこれを Syrjästäkatsojan tarinoita-シリーズの第5作目とは全く知らずに借りました。
Ruokarouvan tytär
Syrjästäkatsojan tarinoita Ⅴ
著者:Emmi Mustonen
出版:Otava, 2017年
表紙:Timo Numminen

Kirsti はヘルシンキ大学でロマンス語学を専攻する学生。一方で、知人のアトリエで帽子を作ったり洋服を作ったりしています。

母親の養女、つまり Kirsti とは義理の姉妹である Alli と大学生生活を満喫していた Kirsti。でも Alli が結核を患ってしまったあと、つらく重い日々が続き、大学生活にも身が入りません。

そんな中 Kirsti は、母親たちの計らいで、ファッションのメッカ、パリに行くことに。そして、Kristi のパリでの生活が始まります。

*****

小説で描かれている時代は、1924年から1927年。表紙の女性を見て、何気に日本の大正時代を連想した私。でもそれも、あながち間違ってもいなかったということですね。

Kirsti が大学生になって、初めて迎えるメーデーから始まり、恋愛、人との別れ、パリでの生活…と、Kirsti の20歳前後の人生が描かれていという、普通に小説っぽい小説です。

小説自体はフィクションですが、その中に実在の人物がちょこちょこと登場します。例えば、フィンランドの有名な詩人である Eino Leino。あるいは、パリのココ・シャネル。

少なくとも名前だけは知っている具体的な人物が登場すると、この時代はこういう人たちが生きていた時代だったのね…ということで、時代をちょっとイメージしやすい気がします。作者はそういうところも狙っているんだろうか…。

"Ruokarouvan tytär -Syrjästäkatsojan tarinoita Ⅴ-"の意味

それぞれの単語の意味です。
  • ruokarouvanruokarouva 賄い婦ruoka 食事・食べ物 + rouva 夫人)の単数属格
  • tytär
  • syrjästäkatsojansyrjästäkatsoja 傍観者 の単数属格
  • tarinoitatarina 物語 の複数分格
書名の意味は「賄い婦の娘」。シリーズ名の意味は「傍観者の物語」。

ruokarouva を「賄い婦」としましたが、この訳が妥当かどうかは分かりません。このシリーズで、この本の前に出版されたのが『Ruokarouva』という書名の本。で、どうやらこの ruokarouva というのは、Kirsti の母親、Ida のことらしい。で、その Ida は下宿のおかみさん?だったみたい。

さらに、このシリーズ名も私には謎です。シリーズを最初から読めばわかるかな。

…とはいっても読まないだろうなあ、きっと。


著者について 

著者名 Emmi Mustonen は、Kirsti Mannninen(1952年~)のペンネーム。その Kirsti Manninen は、作家であり脚本家であり研究者でもあります。小説・脚本の他に、児童書、ノンフィクションなど、作品のジャンルも幅広いようです。

《参考ウェブページ》
Ruokarouvan tytär | Otava
Kirsti Manninen | Otava
Enni Mustonen | Otava
Kirsti Manninen – Wikipedia