愛用している地域の図書館のサイトで紹介されていたのがきっかけで読んだ本。


Loistavat kasvit:
Mitä tiedämme kasveista ja niiden älykkyydestä?
著者:Stefano Mancuso & Alessandra Viola
翻訳者:Laura Lahdensuu
出版:Aura & Co, 2017年
ページ数:186
(参考: Loistavat kasvit - Aula & Co 

このフィンランド語の書名を訳すと『素晴らしい植物たち ―植物とその知性について私達は何を知っているのか―』。

植物は動かない。だから長い間、動物よりも劣等とされてきました。でも、動物と植物では進化の方向が違っただけ。動物のように移動しないからこそ発達した構造、そして多くの繊細な知覚を植物はもっています。

今まで思いもつかなかったような、そんなこんなの興味深い事柄が書かれている面白い本です。日本語にも翻訳されています。だから、本の概要は検索すればいくつか見つかるはず。

そこで、ここには、本題とはちょっとずれたところで思ったことを2つメモししておきます。


まず、固定観念や先入観の恐ろしさ。

18世紀。「分類学の父」とも言われる、とっても有名なカール・フォン・リンネは、食虫植物をオジギソウと同じようなものだと解釈したそう。植物が虫を食べるなんてことはあり得ない!…その固定観念が、食虫植物を食虫植物だと認めることを拒んだみたい。

19世紀。ユリウス・ザックスが、植物の根の成長・動きに関するチャールズ・ダーウィンの見方に猛烈に反論。そもそもザックスは、ダーウィンが植物学に入り込んできたこと自体が気に入らなかったようで…。

リンネもザックスも、大きな功績をあげた素晴らしい研究者。でも、そんな人たちでさえ、固定観念や先入観で思考・判断が歪められてしまうものなのですね。

ましてや我々凡人… 固定観念や先入観に振り回されたくはないけれど、それがとっても難しい😓


そしてもうひとつ。生き物って結局よく似た存在なんだねってこと。

昔は、人間は人間を特別だと考えていました。西洋では特に、聖書の影響もあったでしょうし。でもその後、進化論が唱えられ、猿類の研究が進み、さらには他の動物たちの研究も行われるようになる。そうすると、人間と他の動物たちの間には、多くの共通点があることがわかってくる。

一方で、植物の様々な研究も進められていく。そして、植物にも知覚・感覚があり、植物も賢く生きていることがわかってくる。

人にしてもその他の動物にしても植物にしても、進化の方向が違っていただけ。どの生物がより進化しているとかいないとか、そんなことはいえない。それぞれが地球上で同じような年月を経て進化して、それぞれが今の姿になっているのだから。

動物も植物も結局は似ている…この本を読んでそう思ったのでした。


ところで、原作はイタリア語。原題は『Verde brillante. Sensibilità e intelligenza del mondo vegetale』。Google先生に訳してもらったら『明るい緑 ―植物界の感度と知性―』…あんまりちゃんとした訳じゃないけれど、いいたいことはなんとなくわかる気がします。日本のアマゾンにもあったので、表紙を貼り付けておきます。



日本語版の書名は『植物は〈知性〉をもっている ―20の感覚で思考する生命システム―』。


それぞれ、書名もなにげに違っているし、表紙においてはもっと違う!フィンランド語版の表紙なんて、黒地に食虫植物だし…💦 あまりにも違うのが面白いです。好みがそれだけ違うってこと???