Korpinkehät シリーズの第二作目、つまり『Odininlapsi』(関連記事 【ジュニア文学】Odininlapsi:3部作ファンタジーの第一作目)の続きです。

Mätä
著者:Siri Pettersen
訳:Eeva-Liisa Nyqvist
出版:Jalava  2016年

画像元:Mätä - Art House -ryhmän kirjakauppa

Mätä (Korpinkehät 2)

シリーズ名 "Korpinkehät" については、前記事(【ジュニア文学】Odininlapsi:3部作ファンタジーの第一作目 )を参照。

"Mätä"の意味

腐った(もの)のこと。名詞としても形容詞としても使われる言葉。

このシリーズの一作目の舞台であった Yminmaa では、人間を「腐れを持った者」として恐れていました。主人公の Hirka も「腐れをもった者」の一人。この書名、その「腐れ」から来ているのでしょう。

ノルウェー語の原書名は『Råta』です。

人間の世界の不可思議

Hirka は、生まれ故郷であるはずの人間の世界にやってきます。で、そこでも困難からは逃れられない。そして、自分が何者なのかというのを知ることになります。


一作目の舞台は、明らかに現代のこの世界とは違う世界でした。いかにもファンタジーの世界。でもこの二作目の舞台は人間の世界、それも現代。

同じ時代であっても、電気も車も電話もない、そんな世界から来た Hirka から見るこの世界についての描写が興味深い。

例えば、りんご。Hirka が今まで知っていたりんごとは違って、この世界のりんごはなぜかなかなか腐らない。

あるいは人。死んだような目をした人々、見て見ぬふりをして通り過ぎる人々。

あるいは電気の明かり。Hirka はそれを「炎のない火」という。


あくまでファンタジーであり、ストーリは私たちの社会とは直接的にはかかわることなく進んでいきます。でも実は、本の描写の中に現代の世界への批判もそこはかとなく含めているのかも。

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