前回、selkokieli についての記事(【フィン語】Selkosuomi ~平易フィンランド語~)を書いたのは、この本を読んだからです。

Kello tuhat
著者:Mimmu Tihinen
出版:Pieni Karhu  2016年

この本は、selkokieli(平易言語)で書かれているのですよ。

中はこんな感じで(ぼかし過ぎてわかりにくくなっちゃったかな…)


ページには空間も多いし、文字も大きめ。文章だけじゃなく、視覚的にもとても読みやすい。


KELLO TUHAT

Jesse(イェッセ)は、サッカー好きの中学生。でも、国語は苦手。自分の名前さえも何度も綴りを間違えるって記述がありましたから、Jesse は難読症なのかもしれません。

ある日の国語の授業で、課題が与えられます。本を読んで、その書評をみんなの前で発表するという課題。2人組での作業です。

Jesse のペアになったのが Ninni(ニンニ)、詩が大好きな女の子です。その Ninni が提案した本は、詩集でした。

そして、課題に取り組む中で、 Jesse も詩の良さを知っていく…そんな話です。


さらっと読める内容です。そして、すがすがしい読後感。楽しい本です。


ところで、最初から読書が苦手な子を対象に本が書かれるって、どれだけ一般的なことなのでしょう? 日本にそういう文化はあるのかな? 

少なくとも、出版社にとっては儲けになる類の本ではないでしょうね。ちなみに、この本の出版にあたっては、国の補助金が出ています。

著者について

Mimmu Tihinen(1964年~)は、児童・ジュニア文学作家。処女作は『Sokerista, kukkasista』(2006年出版)。受賞こそはしませんでしたが、その年のトペリウス賞(フィンランドの有名な児童文学賞)にノミネートされた作品です。

2012年には、Selkokeskus(平易言語センター)主催の児童・ジュニア文学コンクールで1位を受賞。その作品がこの『Kello tuhat』です。


出版社のページです。本と作者について、もう少し詳しく紹介されていますよ。

書名 "Kello tuhat" の意味

最後に、書名の意味です。

kello

時計のことです。また、時刻を表す時にも使います。例えば、kello yksi といえば1時のこと、kello kymmenen といえば10時のことです。時刻を表す時、kello の省略形として使われるのが klo。つまり、klo のあとに数字が書いてあれば、それは時刻です。例えば klo 1010時のことです。

tuhat

数字の1000のことです。

Kello tuhat

1000時という意味になります。

この書名は、本の中に登場する詩集(もちろんフィクション)の名でもあります。1000時っていう時刻がないのに変じゃないか、と思われるかもしれませんね。なぜにこの名かという種明かしが、本の中にはもちろんありますよ。でも、ここでは触れないでおきましょう。