📖【家政】Paikka kaikelle:身の回りにはなぜ物があふれているのか?
再び図書館の電子ブック。「今一番借りられている」順で上位にあった本です。
表紙と書名を見て、内容的にはこんまりさんの本と同じような本かな?と思ったのですが、だいぶ違っていました。こんまりさんの本は読むための本というよりは片付けをするための本。この本もテーマは部屋や片付けや物で、こんまりさんの本と重なるところはありますが、視点は違います。
なかなか面白い本でしたがうまくまとめられませんので、断片的なメモだけいくつか書き留めておきます。
「センスがいい」って言葉があるけれど、その「センス」ってなんでしょう?生まれつきの才能?
というところで出てくるのが、フランスの社会学者ピエール・ブルデューの文化資本論。上流階級の嗜好に等しいものがいいセンス。上流階級の子弟は「いいセンス」のなかで育つのでセンスがいいのだということになります。つまり、センスのよさは生まれつきではなく、育った環境で身につけた文化資本ということになります。
考えてみれば、日本の歴史の中にもそういうのありますよね。例えば「神様」は清いもの。だから例えば、神に仕える者は清い身分…上層階級。
一方で、えた・ひにんは穢れのある、つまり汚い仕事をする身分…下層階級。
そういえば、日本語のウェブサイトを見ていると「金持ちの家には物がなくてすっきりしている」なんて話をよく目にします。それは調査と統計に基づいたもの?それとも、心の深いどこかの「清い=上層階級」「汚い=下層階級」という先入観が作りだした推論?
きれいなすっきりとした部屋に住んでいるのか、はたまた物の多い部屋に住んでいるのかは、本来なら個人の問題。でも世間ではそれを、人をランキングするときの判断材料ににしてしまっていると著者はいいます。うん、確かに…
フィンランドではここ数十年、家事にかけられている時間は変わっていないのだそうですよ。最初は意外に思ったけれど、言われてみれば確かに「あるある」です。
例えば洗濯。洗濯の量が昔と同じだったらそれにかかわる家事時間は少なくなるはずだけれど、そうはならなかった。昔と比べると洗濯ものの量が大幅に増えている。まず、衣類やらタオルやらシーツやらを洗う頻度が、一昔前よりずっと高くなっている。さらに、それぞれの物の数自体も増えている。だからそれらの管理にもより手がかかるようになった…
工業化が進み生産性上昇。織物生産では、半年の営業で1年分の消費を補えるようになったそう。靴生産においては、1年の14%の営業で1年分の消費を補えるようになったんだとか。
じゃあ従業員の就業時間を減らそう…なんて話にはもちろんなる筈もなく、生産量が増えました。過剰生産ですよね。
で、それを消費してもらうために(産業を発展させるために?)バンバン宣伝して消費を促した…というのが今の消費社会の始まりらしい。
著者もちょっとつぶやいていましたけど、この時に生産量を上げる方向ではなく、就業時間を短くする方向に進んでいたら、世界は変わっていたかもです。
片付けの目的は人それぞれ。日常の生活が円滑にまわるようにすることに重点をおくのであれば、別にインテリア雑誌の写真のような部屋を目指す必要はないわけですから。
《参考ウェブページ》
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Paikka kaikelle -Mistä tavaratulva syntyy ja kuinka se padotaan-
Paikka kaikelle Mistä tavaratulva syntyy ja kuinka se padotaan 著者:Ilana Aalto 出版:Atena( ホームページ )2017年 表紙:Elina Warsta 画像元: Paikka kaikelle |
表紙と書名を見て、内容的にはこんまりさんの本と同じような本かな?と思ったのですが、だいぶ違っていました。こんまりさんの本は読むための本というよりは片付けをするための本。この本もテーマは部屋や片付けや物で、こんまりさんの本と重なるところはありますが、視点は違います。
Tämä kirjä ei neuvo sinulle miten sinun pitäisi elää, vaan kertoo miksi elät niin kuin elät. (p.9)つまり、「こういう風に片付けなさい」という片付けのノウハウではなく、なぜ現代の私たちが今のような生活をしているのか、その背景を語ることに重点を置いている本です。
(ゴーグル先生がまあまあ通じそうな翻訳をしてくれました)⇒この本はあなたがどのように生きなければならないかについて助言するのではなく、あなたが生きているように生きている理由を伝えています。
なかなか面白い本でしたがうまくまとめられませんので、断片的なメモだけいくつか書き留めておきます。
上流階級の嗜好=いいセンス
素敵な部屋へのあこがれってありますよね。北欧インテリアといわれるものが、もしかすると日本でも人気?「センスがいい」って言葉があるけれど、その「センス」ってなんでしょう?生まれつきの才能?
というところで出てくるのが、フランスの社会学者ピエール・ブルデューの文化資本論。上流階級の嗜好に等しいものがいいセンス。上流階級の子弟は「いいセンス」のなかで育つのでセンスがいいのだということになります。つまり、センスのよさは生まれつきではなく、育った環境で身につけた文化資本ということになります。
清さと汚さ
社会階級の上層は清さと結び付けられ下層は穢れつまり汚さと結び付けられる…本の中で例として挙げられていたのは、インドのカースト制度。考えてみれば、日本の歴史の中にもそういうのありますよね。例えば「神様」は清いもの。だから例えば、神に仕える者は清い身分…上層階級。
一方で、えた・ひにんは穢れのある、つまり汚い仕事をする身分…下層階級。
そういえば、日本語のウェブサイトを見ていると「金持ちの家には物がなくてすっきりしている」なんて話をよく目にします。それは調査と統計に基づいたもの?それとも、心の深いどこかの「清い=上層階級」「汚い=下層階級」という先入観が作りだした推論?
きれいなすっきりとした部屋に住んでいるのか、はたまた物の多い部屋に住んでいるのかは、本来なら個人の問題。でも世間ではそれを、人をランキングするときの判断材料ににしてしまっていると著者はいいます。うん、確かに…
家事時間は減っていない
ここ数十年の間に、様々な電化製品が家庭に入ってきました。多くの家事に手間がかからなくなった分、家事にかかる時間が減ったのかと思いきや…フィンランドではここ数十年、家事にかけられている時間は変わっていないのだそうですよ。最初は意外に思ったけれど、言われてみれば確かに「あるある」です。
例えば洗濯。洗濯の量が昔と同じだったらそれにかかわる家事時間は少なくなるはずだけれど、そうはならなかった。昔と比べると洗濯ものの量が大幅に増えている。まず、衣類やらタオルやらシーツやらを洗う頻度が、一昔前よりずっと高くなっている。さらに、それぞれの物の数自体も増えている。だからそれらの管理にもより手がかかるようになった…
生産性の上昇→消費の助長
1920年代のアメリカの話。工業化が進み生産性上昇。織物生産では、半年の営業で1年分の消費を補えるようになったそう。靴生産においては、1年の14%の営業で1年分の消費を補えるようになったんだとか。
じゃあ従業員の就業時間を減らそう…なんて話にはもちろんなる筈もなく、生産量が増えました。過剰生産ですよね。
で、それを消費してもらうために(産業を発展させるために?)バンバン宣伝して消費を促した…というのが今の消費社会の始まりらしい。
著者もちょっとつぶやいていましたけど、この時に生産量を上げる方向ではなく、就業時間を短くする方向に進んでいたら、世界は変わっていたかもです。
片付けについては
まず、片付けの目的を明確にする。そしてそれに基づいて片付ける…というのが著者の方針のようです。片付けの目的は人それぞれ。日常の生活が円滑にまわるようにすることに重点をおくのであれば、別にインテリア雑誌の写真のような部屋を目指す必要はないわけですから。
"Paikka kaikelle -Mistä tavaratulva syntyy ja kuinka se padotaan-"の意味
まずはそれぞれの単語の意味。- paikka:場所
- kaikelle:kaikki 全部 の単数向格
- mistä:どこから(mikä 何 の出格 )
- tavaratulva:物の洪水(tavara 物 + tulva 洪水)
- syntyy:syntyä 生まれる の3人称単数形
- ja:~と
- kuinka:どうやって。いかに。
- se:それ
- padotaan:padota せき止める の受動形
書名を直訳すれば「全部に場所を」ですかね。要は、すべての物に場所を与えてあげましょう(そうするとちらからないよ)っていうことかな。
副題は「どこから物の洪水は生まれ、どうやってそれをせき止めるのか」
日本語の「洪水」も「物があふれるほどたくさんあること。」(洪水(こうずい)とは - コトバンク )を意味することがありますが、フィンランド語でも同じような使い方をするようですね。
著者について
著者 Ilana Aalto(1975年~)は、整理収納アドバイザー、および史家(文化史、特に、日常・家庭の歴史)です。《参考ウェブページ》
本の紹介(出版社のサイト) ⇒ Paikka kaikelle
著者の紹介(出版社のサイト)⇒ Ilana Aalto - Kirjailijat
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