これも、夫に適当に選んで借りてきてもらった本です。前回の本(関連記事 【小説】Kristallipalatsi:ファッションブロガーを題材にした現代小説)よりは、ぐんと薄い(134頁)です。写真もいっぱい!! 文字が並んでいるページは、あまり多くありません。…私にはぴったりの本ですわ

Neidon kyynel
ja muita tarinoita Olavinlinnasta

著者:Matti Rautiainen
出版:Kustannus Aarni  2015年

画像元:http://kustannusaarni.fi/olavinlinnan-tarinat-houkuttavasti-tietokirjassa/

だから内容は薄いのか?といえば、もちろんそんなことはありません。

Neidon kyynel ja muita tarinoita Olavinlinnasta

書名がこの本の内容を語っているので、まずはその意味から。

"Neidon kyynel ja muita tarinoita Olavinlinnasta"の意味

それぞれの単語の意味です。
  • neito
  • kyynel
  • ja~と
  • muu他(の)
  • tarina物語
  • Olavinlinnaオラヴィ城(複合語:Olavi(人名)の単数属格+linna

neidon kyynel(neito の単数属格+kyynel)で、娘の涙
muita tarinoita(ともに複数分格)で、(複数の)他の物語
これら2つのことが ja でつながっています。ですから neidon kyynel ja muita tarinoita で、娘の涙と他の物語
そして Olavinlinna の単数出格が Olavinlinnasta。この出格は「~について」というような意味合い。

直訳すると変な日本語になりそうなのでこれ以上の訳はしませんが、書名の意味はなんとなく伝わるでしょうか。

この本は、オラヴィ城にまつわる伝説「娘の涙」とその他のいくつかの物語(伝説)について書かれた本なのです。

オラヴィ城にまつわる物語の背景

オラヴィ城にまつわる8つの物語・伝説についてかかれています。でも、物語・伝説そのものよりも、それらの背景が主役。前書きにもこう書かれています。
Tarinoille on aina syynsä, eikä aina ole kiinnostavaa kysyä, ovatko ne totta. Olennaisempaa on kysyä, miksi tätä tarinaa kerrotaan edelleen, mihin se liittyy ja mitä se on ihmisille antanut tai antaa edelleen? (p.12)
(下手な意訳ですが…)
何かが語られるのには必ず理由があり、その物語が真実かどうかと問うことにはあまり意味がない。もっと本質的な問いは、なぜそれが語られるのか、どんなこととかかわっているのか、それが私たち人間に何を与えてきたのかということである。

ところでこのオラヴィ城は、15世紀後半に防衛のために建てられたお城です。フィンランドには中世時代に建てられた城が、もう2つ現存しています。ハメ城、トゥルク城です。どちらもお城の名前はその地域の名前。でもオラヴィ城だけは、サヴォ城(←地域の名前を使えばこうなるはず)ではなくオラヴィ城なんですよ。

この本を読んで、なぜにオラヴィ城なのかというのも納得できました。

オラヴィって Pyhä Olavi(名前をフィンランド語的に発音すれば「聖オラヴィ」。日本ではこの名前で知られている?→オーラヴ2世 (ノルウェー王) - Wikipedia)から来ているらしいです。オラヴィを城の守護聖人としたからオラヴィ城。当時、フィンランドの聖人(聖ヘンリー もとは司教)よりも聖オラヴィ(もとバイキング!?)のほうが慕われていたらしい。


本に取り上げられているオラヴィ城にまつわる8つの話は、それぞれタイプの違うものです。そしてそれぞれが、なかなか興味深いものでした。

史実がもとになっているものもあれば、その昔の博識者?が古典に書かれていた人の名前を魚名だと勘違いしたことで生まれた伝説、お城の壁にたまたま生えていたナナカマドにある乙女の悲劇をくっつけることで、ナナカマドを人に愛される観光名物にしてしまった、等々。


観光前にこういう本を読むと、観光がより楽しめそう。残念ながら、オラヴィ城に行く予定はないんですけどね。

著者について


著者 Matti Rautiainen はユバスキュラに住む歴史家。ユバスキュラ大学教育学部の講師。


本について詳しくは、出版社のページをどうぞ。

Matti Rautiainen: Neidon kyynel ja muita tarinoita Olavinlinnasta