毎度のごとく、図書館から借りた電子ブックです。よく知られている本であることを全く知らずに借りました。

読後にググってみるまで、世界で600万部以上の売り上げがあった本であることも、映画化されていることも、全然知らなかったんです、私。(-_-;)

Poika raidallisessa pyjamassa

翻訳された本って、国によって表紙が違うことあります。でもこの本は、どの言語のも表紙のデザインは同じ? 英語版も日本語版も同じような表紙ですよね。…これ、アウシュビッツで使われていたシャツ、そのままなんでしょうか?
Poika raidallisessa pyjamassa
著者:John Boyne
訳者:Laura Beck
出版:Bazar, 2017年

日本語でも出版されているし、映画化もされているので、ストーリーはここには書きません。そのかわり、個人的に思ったことを3つほど。

これだけ純粋な子供でいることは可能だったのか?

主人公のブルーノが、よくいえばあまりに純粋、悪くいえばあまりに世間知らずなものだから、ふとそんなことを考えたのです。

物語はフィクション。そして、ブルーノがそんな子だったからこその物語の展開だし、だからこそ心に残る作品。ですから、作品の設定に難癖をつけたいわけではありません。実際のドイツ社会ではどうだったのだろう、という単なる疑問です。

9歳というと、もう学校に通っていたんじゃないか? とすると、学校教育の影響が少なからずあったのでは? 当時、ドイツの学校でどんな教育がされていたかは全く知らないけれど、ナチズムの影響が皆無だったとは考えにくい。

さらに、世間の大人たちの言動はそれなりに見聞きしていたはず。まだ自分自身の考えで善悪が判断できる年齢ではないと思われるので、身近な大人たちの影響はすごく大きかったと思うんですよね。

そんな中でナチズムに染まらず、差別も知らないまま生活することできたのかな?…実際のところはどうだったのでしょう?

真実をどこまで伝えるべきだったのか?

ブルーノは父親が具体的にどんな仕事をしているのか全く知りませんでした。ユダヤ人の迫害のことも。

ブルーノが何も知らなかったからこその結末…

ブルーノの家で給仕をしていた Pavel が、以前は医者であったということを知ったときにも、Pavel が若い軍人にひどい扱いをされたときにも、ブルーノにはそれらの背景にあるものについて何も語られませんでした。柵の向こう側(つまり収容所)についても。

単にまだ何も知るべきではない年齢だと親が考えていたから?あるいは、親たち自身が心の奥で、ユダヤ人迫害を間違ったことだと思っていたから?

いずれにしても、ブルーノに何も伝えなかったことが、結局はあだになったわけです。

物語の中に関わらず現実の世界でも、子供に何をどれだけ伝えるかというのは、場合によってはとても難しいことなのかも…

もしブルーノがベルリンにもどっていたら

ちょっと考えてみたのですよ、もしブルーノがベルリンに戻ることができたとしたら、どんな子になっていたのだろうって。

しばらくはシュムエルのことを思い出すことはあったとしても、時とともに忘れていくのかな? アウシュビッツで暮らしているうちに、ベルリンの友達のことは徐々に忘れていったような子ですから。

ユダヤ人迫害について知った時にはどんな反応をするんだろう? そういうものだと
その思想にそのまま染まっていった? 疑問に思いながらも、世間に合わせて生きていった?

この時代とブルーノの年齢を考えあわせて想像するに、大きな声で反論する…なんてことはできなかったでしょうね。そもそも、シュムエルについて「こいつはおまえの友達か?」と聞かれたときに、こわくて正直には答えられなかった子。もし疑問を抱いたとしてもそんなことは口にせず、まわりに合わせて生きていったのだろうと想像します。

実際のところ、当時、子供だけじゃなく、大人にだってそういう人は多かったのだろうと思うのです。当時は命もかかっていたのでしょうから。

*****

この本を原作とした映画のDVDも図書館で見つけました。でも、あまりにつらいストーリーなので見たくない。私には本だけで十分です。

"Poika raidallisessa pyjamassa"の意味

それぞれの単語の意味です。
  • poika少年
  • raidallisessaraidallinen 縞模様(の) の 単数内格
  • pyjamassapyjama パジャマ の単数内格
とっても直訳的に意味をとると「縞模様のパジャマの中の少年」。で、つまり「縞模様のパジャマを着た少年」ということ。

原書名は『The Boy in the Striped Pyjamas』なので、フィンランド語の書名はそれをそのまま訳したもののようですね。

著者について

John Boyne(ジョン・ボイン  1971年~ )は、アイルランドの作家。彼の作品は、この『Poika raidallisessa pyjamassa』の他にも数冊が、フィンランド語にも翻訳されているそう。

《参考ウェブページ》
Poika raidallisessa pyjamassa - Bazar Kustannus
John Boyne - Bazar Kustannus
縞模様のパジャマの少年 - Wikipedia
ジョン・ボイン - Wikipedia