📖【歴史】Rikki revitty maa:フィンランドの内戦
去年はフィンランド独立100周年。そして今年はフィンランドの内戦から100年。内戦について、ラジオ・テレビ・新聞等で見聞きすることも多いこの頃です。
そしてこの本は、いつものように図書館の電子ブックで今よく借りられている本の中から選んで借りたもの。
電子ブックの貸出期間、2週間では読み終わらず(読むの遅いんです…)、最後のほうは紙の本を借りて読みました。
ところで、現物としての図書館の本は、図書館が買い入れたらそれが処分されるまでは図書館の蔵書ですよね、きっと。
でも、電子ブックの場合は、図書館が限られた期間だけのライセンスを買い入れる場合もあるみたい。前に借りた『Kaamosmurhat』( 📖【小説】Kaamosmurhat:ラップランドの冬、そして殺人事件)という本もそうだったけど、この本もすでに、図書館の電子ブックのリストから外れているようです。
内戦による死亡者数は推定で約3万8000人。当時のフィンランドの人口は300万人余りということですから、全人口の1%余りが死亡したということになります。
全体の死亡者数をその原因によって大きく分けると、戦闘での死亡者が3分の1、処刑・殺害による死亡者が3分の1、捕虜収容所の空腹・病気・暴力等による死亡者が残りの3分の1となります。
内戦による死亡者のうち 85%は赤衛軍の人たち。また、死亡者の中には約2000人のロシア人も含まれています。軍人だけでなく一般市民も殺されたのだとか。
戦時中は赤衛軍も白衛軍も、捕虜をその場で殺害するなんてことをやっていたようです。特に、白衛軍によるそれは、数としては赤衛軍より多い。ちなみに、白衛軍の人たちは、戦時中行き過ぎた処刑・殺害をしていたとしても、戦後一切罪に問われることはありませんでした。
1つの史実についてもほんとうにいろいろな掘り下げ方がある…この本は、それを具体的に示してくれる本でもあります。12章構成ですが、それぞれの章がそれぞれの角度から書かれているのです。
個人的に面白いと思ったのは、11歳~20歳の女生徒たちが戦後まもなく書いた作文を資料として使った歴史研究。そもそも、そういう作文が資料として今まで残されてきたということ自体すごい…
名称だけをとってもそれがよくわかります。白衛軍はこの内戦を「vapaussota(解放戦争)」と呼びました。内戦は、ロシア、さらにはボリシェヴィキからのフィンランドの解放のための戦い、という解釈です。この名称は、学校の教科書などでも1960~70年代まで使われていたそうです。
内戦の名称は他にもいろいろあります。「kannsalaissota(市民戦争)」「punakapina(赤の暴動)」「veljessota(兄弟戦争)」などなど。
それぞれの名称は、内戦をどう解釈するかということと深いかかわりがあります。個人的には、この書名でも使われている「sisällissota(内戦)」というのが中立的でいいと思っていますが、とらえ方はひとそれぞれ。
そういえば、今年初めにこんなニュースが話題になっていました。
内戦から100年が経っても、内戦のとらえ方がひとつにまとまるということはなさそうです。
これはそのまま「フィンランド内戦の経験と遺産」と訳せますかね。
フィンランドの研究者たちによって書かれた本ではありますが、もともとは『The Finnish Civil War 1918: History, Memory, Legacy』という書名で英語で出版されたものです。
もうひよりの編者、Aapo Roselius(1975年~)は哲学博士。オウル大学のフィンランド政治史の講師。
これら2人の編者は著者でもあります。
そして彼らの他に、著者は8名。
Anders Ahlbäck はオーボアカデミー大学の北欧史の講師。
Pertti Haapala(1954年~)はタンペレ大学のフィンランド史の教授。
Marianne Junila は歴史の研究者としてオウル大学で勤務。また、ユバスキュラ大学の社会史の講師。
Tiina Kinnunen は、オウル大学のフィンランド史・北欧史の教授。
Tiina Lintunen は、政治学博士。トゥルク大学で政治学史を研究。
Tauno Saarela(1952年~)は、ヘルシンキ大学の政治学史の講師。
Juha Siltala(1957年~)は、ヘルシンキ大学のフィンランド史教授。
Marko Tikka(1970年~)はタンペレ大学のフィンランド史研究者および講師。
参考ウェブページにある本の目次をみると、それぞれの著者がどんな章を書いているかがわかります。
《参考ウェブページ》
Rikki revitty maa. Suomen sisällissodan kokemukset ja perintö.
470_Sisallys.pdf (本の目次)
そしてこの本は、いつものように図書館の電子ブックで今よく借りられている本の中から選んで借りたもの。
電子ブックの貸出期間、2週間では読み終わらず(読むの遅いんです…)、最後のほうは紙の本を借りて読みました。
ところで、現物としての図書館の本は、図書館が買い入れたらそれが処分されるまでは図書館の蔵書ですよね、きっと。
でも、電子ブックの場合は、図書館が限られた期間だけのライセンスを買い入れる場合もあるみたい。前に借りた『Kaamosmurhat』( 📖【小説】Kaamosmurhat:ラップランドの冬、そして殺人事件)という本もそうだったけど、この本もすでに、図書館の電子ブックのリストから外れているようです。
Rikki revitty maa: Suomen sisällissodan kokemukset ja perintö
Rikki revitty maa Suomen sisällissodan kokemukset ja perintö 編者:Tuomas Tepora, Aapo Roselius 出版:Gaudeamus 2018年 |
フィンランドの内戦
フィンランドで赤衛軍と白衛軍による内戦が始まったのは1918年1月下旬。そして、同じ年の5月16日には、勝利した白衛軍のパレードが行われています。つまり、内戦の期間自体はそれほど長くはありません。それでも内戦の残した傷跡は大きなものでした。内戦による死亡者数は推定で約3万8000人。当時のフィンランドの人口は300万人余りということですから、全人口の1%余りが死亡したということになります。
全体の死亡者数をその原因によって大きく分けると、戦闘での死亡者が3分の1、処刑・殺害による死亡者が3分の1、捕虜収容所の空腹・病気・暴力等による死亡者が残りの3分の1となります。
内戦による死亡者のうち 85%は赤衛軍の人たち。また、死亡者の中には約2000人のロシア人も含まれています。軍人だけでなく一般市民も殺されたのだとか。
戦時中は赤衛軍も白衛軍も、捕虜をその場で殺害するなんてことをやっていたようです。特に、白衛軍によるそれは、数としては赤衛軍より多い。ちなみに、白衛軍の人たちは、戦時中行き過ぎた処刑・殺害をしていたとしても、戦後一切罪に問われることはありませんでした。
さまざまな角度からの歴史研究
歴史ってさまざまな角度から掘り下げることができるのですね。(受験勉強なんていうのをしていたころは、歴史というのは年号と出来事・人名を覚えることだと思っていた自分がはずかしい…。)1つの史実についてもほんとうにいろいろな掘り下げ方がある…この本は、それを具体的に示してくれる本でもあります。12章構成ですが、それぞれの章がそれぞれの角度から書かれているのです。
個人的に面白いと思ったのは、11歳~20歳の女生徒たちが戦後まもなく書いた作文を資料として使った歴史研究。そもそも、そういう作文が資料として今まで残されてきたということ自体すごい…
時代・立場による解釈の違い
時代、立場などによって、歴史の解釈や史実への意味づけは変わるもの。フィンランドの内戦は本当にそのいい例だと思いました。名称だけをとってもそれがよくわかります。白衛軍はこの内戦を「vapaussota(解放戦争)」と呼びました。内戦は、ロシア、さらにはボリシェヴィキからのフィンランドの解放のための戦い、という解釈です。この名称は、学校の教科書などでも1960~70年代まで使われていたそうです。
内戦の名称は他にもいろいろあります。「kannsalaissota(市民戦争)」「punakapina(赤の暴動)」「veljessota(兄弟戦争)」などなど。
それぞれの名称は、内戦をどう解釈するかということと深いかかわりがあります。個人的には、この書名でも使われている「sisällissota(内戦)」というのが中立的でいいと思っていますが、とらえ方はひとそれぞれ。
そういえば、今年初めにこんなニュースが話題になっていました。
内戦から100年が経っても、内戦のとらえ方がひとつにまとまるということはなさそうです。
"Rikki revitty maa: Suomen sisällissodan kokemukset ja perintö"の意味
それぞれの単語の意味です。まずはタイトル部分。
- rikki:壊れた(副詞)
- revitty:repiä 引き裂く の受動過去分詞
- maa:国
直訳しようとするとちゃんと日本語にならない…。壊れた状態に引き裂かれちゃった国という意味でしょうが、「2つに引き裂かれた国」としたら意訳すぎますかね?
そしてサブタイトルの方。
- Suomen:Suomi フィンランド の単数属格
- sisällissodan:sisällissota 内戦 の単数属格
- kokemukset:kokemus 経験 の複数主格
- ja:~と
- perintö:遺産
フィンランドの研究者たちによって書かれた本ではありますが、もともとは『The Finnish Civil War 1918: History, Memory, Legacy』という書名で英語で出版されたものです。
著者について
編者のひとり、Tuomas Tepora(1978年)は哲学博士。フィンランド史、北欧史のヘルシンキ大学講師。もうひよりの編者、Aapo Roselius(1975年~)は哲学博士。オウル大学のフィンランド政治史の講師。
これら2人の編者は著者でもあります。
そして彼らの他に、著者は8名。
Anders Ahlbäck はオーボアカデミー大学の北欧史の講師。
Pertti Haapala(1954年~)はタンペレ大学のフィンランド史の教授。
Marianne Junila は歴史の研究者としてオウル大学で勤務。また、ユバスキュラ大学の社会史の講師。
Tiina Kinnunen は、オウル大学のフィンランド史・北欧史の教授。
Tiina Lintunen は、政治学博士。トゥルク大学で政治学史を研究。
Tauno Saarela(1952年~)は、ヘルシンキ大学の政治学史の講師。
Juha Siltala(1957年~)は、ヘルシンキ大学のフィンランド史教授。
Marko Tikka(1970年~)はタンペレ大学のフィンランド史研究者および講師。
参考ウェブページにある本の目次をみると、それぞれの著者がどんな章を書いているかがわかります。
《参考ウェブページ》
Rikki revitty maa. Suomen sisällissodan kokemukset ja perintö.
470_Sisallys.pdf (本の目次)
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