少し前に、ヘニング・マンケルの本を読みました( 📖【小説】Haudattu:白骨死体の謎を解く)。それがきっかけで、この本を図書館から借りてみた次第。

このところ電子ブックを借りることが多かったけれど、これは紙の本です。327頁あります。でも、この作品の日本語版『殺人者の顔』のページ数は430。100頁余り違う…

本のページの文字数とか数えたことないけれど、フィンランド語の本のほうが日本語の本よりも、1ページに内容がみっちりつまってるんですかね?

Kasvoton kuolema

Kasvoton kuolema
著者:Henning Mankell
訳者:Markku Mannila
出版:Otava, 2005年

日本語版の出版社によるこの本の紹介文です。
雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? 人間味溢れる中年刑事ヴァランダー登場。スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕!
この本がスウェーデンで出版されたのは 1991年。もう26年も前のこと。でも、扱われているテーマは全然古びていません。いや、古いどころか今の時代にぴったりのテーマ。フィンランドでも特に近年、極右的な思想や行動についてニュースなどで見聞きすることが多くなってきていますから。

スウェーデンは、フィンランドよりもずっと移民の多い国です。レイシズムも、フィンランドよりも早くから表面化していたのでしょう。そしておそらく、今もおさまってはいない…

1990年代初めにこのテーマを取り上げた作者は先見の明があったのだな、と感心しました。

が…

何か悪いことが起きたときに、それを移民やよそ者のせいにする。そして何の根拠もなしに彼らを襲う。そういうのって、今始まったことではない事に気づきました。日本の歴史の中では、例えば関東大震災後の虐殺事件。

人っていつまでたっても進歩できないのかなあ…

"Kasvoton kuolema"の意味

それぞれの単語の意味です。
  • kasvoton顔のない
  • kuolema
つまり『Kasvoton kuolema』で『顔のない死』。

スウェーデン語の原題は『Mördare utan ansikte』。Google先生の翻訳では『顔のない殺人者』。その訳が正しいとすれば、フィンランド語も日本語も、スウェーデン語の書名をそのまま訳したものではないってことになりますね。

そうそう、kasvoton といえば…

映画『千と千尋の神隠し』(フィンランド語名『Henkien kätkemä』)に登場する「カオナシ」、フィンランド語では「Kasvoton」という名前です。

著者について

著者 Henning Mankell(ヘニング・マンケル 1948年~2015年)は、スウェーデンの作家。以前記事にした『Haudattu』( 📖【小説】Haudattu:白骨死体の謎を解く)と同じ作者です。

この『Kasvoton kuolema』は、ヴァランダーシリーズの最初の作品。スウェーデンでの出版は1991年。フィンランド語版が最初に出版されたのは1993年です。

《参考ウェブページ》
Kasvoton kuolema | Otava
ヘニング・マンケル - Wikipedia
殺人者の顔 - ヘニング・マンケル/柳沢由実子 訳|東京創元社
殺人者の顔 - Wikipedia