久しぶりの子供向けの本。記事には「ジュニア文学」というラベルをはっておきますが、主人公たちの年齢を考えると、対象読者は小学校高学年ぐらい。

いつものように図書館の電子ブックを「今一番借りられている本」順に並べた結果、この本を借りる運びとなったのでした。

Kuriton koiranpentu - Tassu-trio -

Kuriton koiranpentu
- Tassu-trio -
著者:Helena Meripaasi
出版:Otava,  2017年
表紙:Mirjami Manninen

ずっと犬が欲しかった Allu。誕生日にやっと夢がかないました。Allu のもとにやってきたのは、ミニチュア・ピンシャー。しつけがなかなかうまくいかず、悪戦苦闘の日々。

Christa は猫が大好き。最近まで猫を飼っていました。でもその猫が死んだあとは、猫があまり好きでない父親の反対もあって、なかなか猫を飼うことができません。

Erika も動物好き。両親ともに獣医で、小さいころから動物と触れ合っています。Erika の飼っているのは、ドッグショーにも参加するような犬たち。Erika はまた、アジリティにも挑戦しています。

…そんな3人の話です。

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大人の目で読んでしまうからなんでしょうか。物語そのものよりも、3人の女の子それぞれの家庭環境に注目してしまいました。

姉の Mari が自立して別のアパートで暮らすようになってから、Allu は、母親との二人っきりの暮らし。父親のことはよく知らないし、会ったこともありません。母親が帰ってくるのは大概遅く、時には仕事でバンドの遠征についていき何泊か家を空けることもある。母親の収入は不安定で、金銭的にも恵まれた家庭ではありません。

Christa は、両親と弟の4人家族。でも、Christa にとってはあまり理解のない父親。アイスホッケーファンの父親はアイスホッケークラブに通う弟ばかりをかわいがっている、とChrista は思っています。

Erika の家は動物病院。Erika はそこで母親と二人暮らし。両親は離婚し、父親はスウェーデンで新しいパートナーと暮らしています。休暇に父親とは会うけれど、父親がもう Erika の家に足を踏み入れようともしないのを悲しく思っています。


現代社会を反映させてるのかな?
いずれにしても、こうして普通に、違った家庭環境の子たちが登場しているっていうのはすごくいいなって思います。

日本の本はどうなんだろう? 日本の子供向けの本はもう長い間読んでいないので、全然見当が付きませぬ…

"Kuriton koiranpentu - Tassu-trio -"の意味

「書名と副題」みたいな書き方をしてしまいましたが、"Kuriton koiranpentu"は書名で、"Tassu-trio" はシリーズ名になります。
  • kuritonやんちゃな。手におえない。
  • koiranpentu子犬koira の属格 + pentu 動物の子
  • Tassu-trio:タッス・トリオ(tassu(動物の)足 + trio トリオ
つまり、書名の意味は、タッス・トリオ-シリーズ『手におえない子犬』。

tassu は、犬や猫やクマやウサギの足。つまり肉球のある動物の足を tassu といいます。馬や羊や豚などの足は tassu とは言いません。

ちなみに、日本語で犬に向かって言う「お手!」は、フィンランド語では「Tassu!」です。

著者について

著者の Helena Meripaasi(1967年~)は、フィンランドの作家。ジュニア文学を2000年以降出版しています。

小さいころから犬が身近であったそう。そのせいもあるのでしょうね、彼女の作品は、犬をテーマにしたものが多いようです。

《参考ウェブページ》
Helena Meripaasi | Otava(出版社による著者の紹介)
Kuriton koiranpentu | Otava(出版社による本の紹介)
Kuriton koiranpentu | Otava (出版社による本(電子ブック)の紹介)
Helena Meripaasi – Wikipedia(Wikipedia)